誰誰誰
人間のようなひとがいました
人間のようなひと
「ような」がつけば不確かだ
不確かではあるが生きているので何らかの生物だ
それは火を起こせず
石器を造れず
静寂を慈しみながらも戦闘を好みます
働きません勝つまでは
勤勉と懈怠が変な笑顔で殴り合い、
世間知らずとペダンチズムが政治的な握手をする
その日の空はひどく青かった
嘯くことは哲学なのだ
しかし何のために生きるのか
間抜けなハテナが謎を呼ぶ
机の上の塵を食べ
地底から盗んだ火を蕩尽する
のべつ幕無き神経労働と
海洋呼吸のノスタルジア
人類を乗せた方舟の扉がぱたりと閉まりました
万物の霊長は今日、死んだ!
さらば彼の日の夢たちよ
人間のような人がいました
鏡の国に立ち尽くす塩の柱は
寛容な電気に正直な歯車は
人間のようなひと
- Tags: 詩
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