虫が飛んでいる 羽音が不意にたずねた ヨハンセンは「交響曲の5番だ」と、言った 無智が、おもむろにテーブルを支配した 珈琲だけが真面目だった それでも何食わぬ顔で生きていけるのだ カミラは「洒落ているわ」と、言った 失墜のヴァイオリン ぎぎるぎり 憂いが、椅子に腰かけた 背もたれに虫がとまった やがて羽音は聞こえなくなった