言い訳
窓のそとは真っ赤なひかりだ
カーテンはばたばた踊っている
(非番の警官がブザーを鳴らします)
いいじゃないですか別に
トマトがはげしく破けただけだ
確かに過激さは否めないが
実のところ平穏な暮らしでした
時間が風景が
ひそひそ動く
それが分からぬうちが平和ってもんだ
(彼にはそれがわからなかったようです)
戯言の不法所持
さいわいな人生ってのがどこかにあるんだってねえ
それだってよくよく見つけたもんだ
日記を汚して数十年
ペンの動作が息切れする
常態がよくないその常態だよ
そいつが君を痛めつける
奇病にかかったと思わせる
これは罪だ
(次の日から彼の日記簿は物語の執筆用に変わります)
ドラマだドラマ
冒険活劇!
それもメランコリーで鮮烈な
閃光の生き様になぞらえた私小説にするぞ
(流行への意識が希薄になってまいります)
絹のように真っさらな原稿用紙がいびきをかく
何が愉快で何が残酷か今から調べてくる
(常態は人間をだめにしますから、たまには真水を飲みましょうという話を考えつきますが、一行たりとも書けないので缶詰から飛び出します)
星の思念なんだ大切なのは
丁寧な生活なんてものは余剰の産物だ
ああ戻ったら書けるなこれは
書ける日と書けない日
それらを分かつものこそ愛の意味と同義であり
(それらしい文章に陶酔をはじめます)
離れ離れでいる最後の日を憔悴しきった表情で過ごすうち
いよいよ全き日がおとずれるのだということを感じざるを得ない
わずかな当惑でもって偉大な改革に踏み出した
飛び上がるほどうれしいようでいかんせんおそろしいのだ
細胞のなかの細胞が口を割る
おお神よ
眼前にひろがる混沌は実に世界そのものであった
(まだつづきます)
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