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愛とかいうもの

愛とかいうもの

愛という孤独を食べるけものがいる
愛というすべてを奪い去る怪しげなひかりがある
暗がりのなかに
人混みのなかに
汽車のなかに
星空のなかに
あるいは火山灰のなかに

偏屈な世に足音を立てず歩きまわる
よろよろと体を揺らすそのけものは
腹が減っているのではなく
すでにはち切れんばかりの胃袋を抱え
炯々とした目玉をぎららつかせて
熟しきった街をさまよっている

切符がなければこの流れ星には乗れません
あの時車掌はわたしに言った
けたたましい車輪と鋼製レール
このプラットホームから目を凝らせば
曲がりくねる寂しげな線路が雲海に消える

愛はまだ
静かな朝の田園に警笛を鳴らす
到着を待つのではなく
自らが出発するのだった

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